児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

魔法使いはだれだ

 

魔法使いはだれだ ― 大魔法使いクレストマンシー

魔法使いはだれだ ― 大魔法使いクレストマンシー

 

魔法が禁じられ、魔法使いとわかれば火あぶりになる世界。「このクラスに魔法使いがいる」という告発がされたからさぁ大変。個性豊かなクラスの面々、だれが魔法使いなのか? ただでさえやっかいな寄宿学校暮らしの中、実は大魔女の子孫のナン、みんなをにらみつけて生き延びてきたチャールズ、教師の息子で、いじめられっこのブライアン。おいつめられ、絶対絶命の時だけ使え、といわれた呪文は「クレストマンシー」。登場したクレストマンシーは、不自然なこの世界を、本来の世界に戻そうとする! いかにもジョーンズ的なドタバタと、最初と最後を呼応させるきれいな構成が効いている。 

ニブルとたいせつなきのみ

 

ニブルとたいせつなきのみ

ニブルとたいせつなきのみ

 

「どろんこハリー」のコンビによる作品。ニブルは、ごちそうの木の実であそびたくなった。お母さんが、大切にといったのに、一緒に遊ぼうといってきたおじさんが、野球でボールを飛ばすように、木の実を飛ばしてくすねられてしまいます。ところが、ごちそうがなくなって外食したレストランにその男がいました。ニブルは、どうしようかと考えますが、意を決して返すように言いに行き、その木の実で作ったごちそうに、パパが払ったお金を取り戻します。絵が、かわいいけど、子どもどうしならともかく、相手は大人なので、ちゃんと罰を受けてほしかった! 

考える方法 中学生からの大学講義2

 

 永井均池内了萱野稔人上野千鶴子、若林幹夫、古井由吉の6氏の中高生向きのエッセイをまとめたもの。池内の幸せグッズのからくり、萱野のカントの唱えた道徳の考え方、上野の新しい社会学を進めた道筋など、が比較的わかりやくて面白く感じた。特にニセ科学には注意したいですね。

スピニー通りの秘密の絵

 

スピニー通りの秘密の絵

スピニー通りの秘密の絵

 

 「ゴールデンフィンチ」の児童書版という感じの本。セオドラは13歳。家に経済的な余裕はなく、庭で畑を作り、ニワトリを飼う自給自足まがいの生活をしている。拾ったもののリサイクルの達人でもある。母親は、数学の論文と紅茶の自分だけの世界で生きていて、まわりに何が起きているかもきづいていない。頼りは祖父のジャック。美術館の警備員をしていて、画家でもあった。だが、事故で急死してしまう。「卵の下に 宝・・」と謎のことばを残して。セオは、毎日卵を置いている暖炉の下をさがすが、何も見つからない。だが、偶然のことからそこにおいてある絵の裏に、別の絵が描かれていたことを発見する。祖父はなぜ、この絵を? そしてこの絵は何の絵? 偶然出会った映画俳優の娘ボーディーとチームを組む。親の都合で転々としているボーディーも友人がいない。そして大人に囲まれて育っているのでちょっと変わっている。ジャックとともに名画を見て育ったセオは、発見した聖母子像はラファエロの絵ではないかと直感するが、それでは、その絵はどこからきたのか? 二人を助けてくれる図書館員のゴールディ、博物館の職員で、セオが何かを持っていることに感づくランドン。収入がなくなり気をもむセオの横で、高価な紅茶を平気で買う母、それを母に売りつけるきどった隣家のマダム・デュモン。実は、祖父が、第二次世界大戦中にナチスの美術品の奪還を担う仕事をしていたという意外な事実から、真相にたどり着く。そして、その絵画の意外な真の持ち主! 伏線からしてよくできた物語。しいて言えば、ジャックは警備員の仕事をしていたし、軍人恩給もあったのに、収入をそんなにきりつめていたのはなぜ? そして、最後の最後に、やっと経済問題が解決されるけど、ここで隠し場所がみつかるか~かな。探索の過程で、様々な友人や手を差し伸べてくれる人と出会うセオの成長物語として満足。

やまたのおろち

 

やまたのおろち~スサノオとクシナダヒメ~: 日本の神話 古事記えほん【三】

やまたのおろち~スサノオとクシナダヒメ~: 日本の神話 古事記えほん【三】

 

 小さい子向きのようだが、荻原さんの文は、可もなく不可もない感じ。絵は、神話というより昔話の雰囲気。オオゲツヒメの場面では、姫が鼻くそをほじっているので、見た子は、実際キタナイと感じると思う。ヒメの「ほと」から麦が出たというが、「ほと」って何?と思うのでは(注はなし)。なんとなく半端、神話としての別世界の雰囲気がほしいと思うが・・・

おいぼれミック

 

おいぼれミック

おいぼれミック

 

 イギリスはレスター。ぼくたち一家はインドからの移民だ。そして、この街には移民が多い。だけどぼくたちが引っ越した隣の家は、いつも怒鳴り散らすイギリス人の老人、ミックが住んでいた。ミックはぼくら移民が大嫌いな差別主義者だった。大音響で音楽をかける(幸い僕の趣味とはバッチリあっていたけど!)。つねに怒鳴る。だけど、学校の不良連中がミックにからもうとしたとき、ぼくは放ってはおけなかった。助けてあげたのに、ありがとうもいわないミック。だけど母さんはいう。我が家はシク教だ。シク教とは、他人とどうかかわるかを大切にするのだと。でも、同族の中でも微妙な対立がある。だれにでもふるまうのがシク教だって父さんは信じているけど、おじさんは、ホームレスなんかおっぽり出せという。老人のミックは、今更考え方を変えられないんだと母は言う。だが、倒れたミックを病院に入れ、ごみ箱みたいだった家を掃除する中で、ハーヴェイはミックには娘がいたこと。そして娘が黒人と結婚したために、逆上したミックが娘を拒否したことを手紙から気が付く。原題は「老いぼれ犬に新しい技を教えてもむだだ」ということわざを縮めたものとのこと。娘と再会し、まさかの新しい技を覚えたミックとハーヴェイのハッピーエンドはうれしいけど、イギリスは移民問題が大変とは知っていたが、実際街のほとんどが移民で占められた時、元からの住民はどんな気持ちになるだろう? そんなに簡単じゃないことが良くわかった。

石井桃子(ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉)

 

 筑摩書房編集部がまとめているとのことで、特定の著者責任はなし、そのせいか、そこそこまじめな女子大生が書いたレポートのような感じ。また、時間が前後するところがあって、ここもやや読みづらい。いちおうオーソドックスにまとめて書いてあるが『ひみつの王国』など、きちんと調査に基づいた評伝に比べると、資料を読んで要領よくまとめました。という雰囲気がある。しかも、さいごに設問が3あるのだが、これ何?です。学習のためのなにかの参考書? 狩野ときわのようすについては、『ひみつの王国』より詳しく書いてあったは参考になった。それくらいでしょうか・・・