児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

キッドナップ・ツアー

 

キッドナップ・ツアー (新潮文庫)

キッドナップ・ツアー (新潮文庫)

 

別居した父親に誘拐されて過ごした夏の毎日。せつなく、きっっちり書かれたロードノベルだが、なぜ、居場所を転々とするの?母親への要求はなんなの?というかんじんな事を、ここまであいまいでいいのだろうか?なにもわからないハルの視点だからにしても、ちょっと無理があるのでは。 

ぼくらはむしさがしたんていだん

 

 よみきかせより、親子で読んで、一緒に虫取りに行くのに役立ちそうな絵本。絵本の中の季節は初夏5~6月くらいか? 最後に虫の地図も作るので、学童とか、幼稚園年長とかの活動として絵本を参考にしてやってみるとよさそう。

大きなかぶ チエーホフショートセレクション

 

大きなかぶ―チェーホフ ショートセレクション (世界ショートセレクション)
 

 表題作は、あの有名な昔話のパロディ。皮肉で悲壮なテイストは高校生くらいから? もともと短編の名手なチエーホフの代表作が入っている(夫がかわるたびに意見が変わる妻「かわいいひと」、避暑地の遊びの恋が深みにはまる「犬を連れたおくさん」など。)。中学生の夏休みの感想文宿題に使うなら、9歳で徒弟に出されてつらい思いをし祖父に懸命に手紙を書く「ワーニカ」あたりかな?

百万ポンド紙幣

 

百万ポンド紙幣―マーク・トウェイン ショートセレクション (世界ショートセレクション)

百万ポンド紙幣―マーク・トウェイン ショートセレクション (世界ショートセレクション)

 

 1800年代半ばに書かれたのが信じられないくらいおもしろいし、星新一ファンの子にも薦められそう。特におすすめは「彼は生きているのか、それとも死んだのか?」「実話一言一句、聞いたとおりに再現したもの」「百万ポンド紙幣」。『彼は・・・』は、死ぬと画家が認められるのを皮肉り、ミレーを死んだことにして売り出して成功する話。『実話・・・』はいつも明るい黒人女性が、語った壮絶な奴隷としての語りをきく。それを明るく語ってのける女性のパワーが魅力。『百万ポンド』は、突然百万ポンドを渡された男がどうなるかという賭けの対象になったまじめなアメリカ男の運命! 『天国だったか? 地獄だったか?」のようにピューリタンを皮肉っているものは、ここまでくると今の日本の子にはややわかりにくいかもと思うが、アメリカの若い時代に現れた野生児マーク・トウェインのパワーが炸裂した短編集でお薦め。

二番がいちばん

 

 D.H.ロレンスの短編集。狙っていた男性を手に入れられなかったが、すかさず二番目をからめとる少女の「二番がいちばん」。破産の後、発作的に入水自殺をした娘を助けた医師が、自分を救う男性として見られて狼狽しつつも彼女を受け入れ「馬商の娘」。浮気者の男を車掌の女性たちが共同でとっちめようとする「乗車券を拝見します」など、リアルに瞬間を切り取ってみせるような短編集。ちなみにうさぎの子を拾う「アドルフ」は、我が家のうさぎのきなこさんをほうふつとさせる傍若無人ぶりに妙に親しみを感じた! 白黒の結論をつけるような作品でないだけに、簡単に感想文を書く題材にするには向かないが、余韻を残し、ふとした瞬間にイメージが立ち上ってくるよう。

世界が若かったころ

 

 表題の「世界が」は、二重人格で過去の野性を持っている男の物語。リアルに過去の記憶を持っているが、リアルでないほうが神秘的かも。自分がだまされた分だけを奪って逃亡する「荒野の旅人」。しっかりと頭を使って獣を倒す「キーシュの物語」。マイナス65度という過酷な環境でたき火に失敗して命を落としていく男の「たき火」など、野性的な物語をとても魅力的に描いている。きちんとした物語が語られているため、このシリーズの中でも、中学生が取り付くのには向きそう。

イードのおくりもの

 

イードのおくりもの

イードのおくりもの

  • 作者: ファウズィアギラニ・ウィリアムズ,プロイティロイ,Fawzia Gilani‐Williams,Proiti Roy,前田君江
  • 出版社/メーカー: 光村教育図書
  • 発売日: 2017/04
  • メディア: 大型本
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 ラマダーンの終わりを祝うイード。イスマトは、家族のためにプレゼントを買い、自分にもズボンを買いましたが、ズボンは、少し長すぎます。妻に、母親に、娘に短くしてほしいと頼みますが、お祝いの準備で忙しく、断られてしまいました。でも、大丈夫と自分で短くしたのですが、そのあとで、やっと手があいた妻が、母親が、娘が直しにやってきて、イードの朝にはズボンがつんつるてんに! でも大丈夫、3人で縫えばもとどおり。やさしいイスマトと、そのイスマトが大好きな家族のちょっとしたドタバタが楽しい。