児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

呪 文豪怪談 ジュニア・セレクション

 

 文豪の短編に、ほとんど本文と同じくらいの注を付けた短編集。こうした注付の名作物は、定期的に出るが、この注はいるのだろうか? いるとしても多すぎる(つい:思わず)なんて注まである。作品は岡本綺堂「笛塚」、三島由紀夫「復讐」、などバラエティに富んでいるが、よくこうしたホラー系に収録される小松左京「くだんのはは」は、やはりすごいと思った。戦争中の追い詰められた空気と、最後の不吉な余韻が出色。吉屋信子「鬼火」のガス代が払えず追いつめられて自死する女の不気味さなど、意外な作品が魅力的だった。だが、各作品の質は悪くないものの、編集の姿勢を見ると特にお勧めしたい気持ちになれない。

空気は踊る

 

空気は踊る (ワンダー・ラボラトリ)

空気は踊る (ワンダー・ラボラトリ)

 

 目には見えないが、風によって存在を感じさせてくれる空気。空気の重量は測れるか? 空気でっぽうの作り方、タコの吸盤の原理など、くうきにまつわるさまざまなことが紹介されている。湿った空気と乾いた空気の重さ比べで、乾いた空気の方が重いというのは驚いたが、水は水素と酸素で、水素原子は軽いと解説され納得。思い込みで判断してはいけませんね。

ヒラメキ公認ガイドブック 世界中を探検しよう

 

ヒラメキ公認ガイドブック世界中を探検しよう

ヒラメキ公認ガイドブック世界中を探検しよう

 

 ともかく細かく情報が書き込んであって、細部を楽しむ本。世界を対象とした探検の歴史を古い時代から展開している感じだが、記述が断片的なことと翻訳なので日本の子には馴染みのない地名や人名も多く、予備知識がないと理解しがたい。むしろこれを読んでいて、もっと知りたいとか、どういう意味?と思ってほかの本に発展する本。こういうのが好きな子がいるけどね。

たべかたのえほん

 

たべかたのえほん (たのしいちしきえほん)

たべかたのえほん (たのしいちしきえほん)

 

「えほん」とあるが、ストーリーはなく、説明文に大きな絵がついていている。いきなり「毎日おかあさんがつくってくれるおいしいごはん」という出だしにびっくり! お父さんはつくらないの? 文をかいているのは食の専門家ではない。ざっくり取材して読みやすくまとめただけではないかと疑う。食に対して特に思いがないなら、それなりに正確なハウツーにすればいいのに、おかあさんはごはんをつくると繰り返され、おとうさんはおみやげをかってくるなんて描写が急に入り正直ビックリ。編集部もなにも疑問に思わなかったのだろうか? 単純な説明にするか、誰かが作ってくれることを盛り込むなら、料理を作ることの思いやりやそうした能力の必要性を男女や年齢を問わずきちんと入れてほしかった。食事マナーには類書もあるし、購入はしない。 

くらべたしらべたひみつのゴキブリ図鑑

 

くらべた・しらべた ひみつのゴキブリ図鑑 (ちしきのぽけっと)

くらべた・しらべた ひみつのゴキブリ図鑑 (ちしきのぽけっと)

 

 「図鑑」とあるが確かに「図鑑」、リアルで嫌いな人は見るだけでも気持ち悪いゴキブリが各種描かれている。ゴキブリは飛翔が苦手で、人間をよけようとして飛んでも、うまく飛べなくて、結果的に人間に飛びついてしまう。成長が実は遅いなどと確かに意外な事実は記述されているが、並列的な感じなので、ゴキブリについて全貌をつかめた感じはしない。だが、いろいろな種類のゴキブリや、顔の形だけの比較などがあるので、図鑑が大好きの子にとっては明らかに魅力な本。

詩ってなあに?

 

詩ってなあに

詩ってなあに

 

 大好きな公園で、詩の発表会があるという。でも、詩ってなぁに? 小さな男の子ダニエルは、いろいろな動物に詩ってなあに? と聞いてみる。その答え自体が詩になっている絵本。地味だが、自分の詩を見つけようとしていくダニエルの姿はよい。

ぼくの鳥の巣絵日記

 

ぼくの鳥の巣絵日記

ぼくの鳥の巣絵日記

 

 自然の中で暮らす様子を、自宅を俯瞰した絵を片面に、鳥のようす、巣作りや食事などをもう片面に描いている。特別なことはないが、細かく描いているので、実際に観察するような気持ちで見ていくことができる。