児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

メイゾンともう一度 マディソン通りの少女たち3

 

メイゾンともう一度―マディソン通りの少女たち〈3〉 (ポプラ・ウイング・ブックス)

メイゾンともう一度―マディソン通りの少女たち〈3〉 (ポプラ・ウイング・ブックス)

 

 青い丘(ブルーヒル)から戻って、地元の学校にマーガレットと通学するメイゾン。だが、変化は続いている。白人の女の子、キャロラインが友だちに加わり、メイゾンとキャロラインが親しさを増す中で、マーガレットは密かに嫉妬を感じる。ボーは黒人だけの男子校に通い「自分に誇りを持つ」ことを学んでいるという。差別的な扱いを受ける一方で、大柄な黒人の男ということで、白人に恐れられる不安定さに落ち着かないボー。そして、生まれたばかりのメイゾンを捨てて出ていった父親が突然帰ってきた! 少しづつ大人になることで幼馴染の間の関係が変わっていく。さまざまな変化を受け入れながらも、最後に二人は自分たちの原点であるマディソン通りの子ども時代の原点を確認する。よりどころになるものを子ども時代に持てるのは幸せですね。

青い丘のメイゾン マディソン通りの少女たち2

 

青い丘(ブルー・ヒル)のメイゾン―マディソン通りの少女たち〈2〉 (ポプラ・ウイング・ブックス)

青い丘(ブルー・ヒル)のメイゾン―マディソン通りの少女たち〈2〉 (ポプラ・ウイング・ブックス)

 

 故郷のブルックリンの街角から外の世界へ旅立ったメイゾン。だが、名門の青い丘(ブルーヒル)校はやっと黒人を受け入れ始めたばかりで中学ではメイゾンだけ。高等科にいた黒人3人のグループが、さっそく声をかけてくれる。もう一人黒人と白人のハーフのパウリは黒人グループに入らず孤高を保っている。黒人で経済的にも恵まれないという二重の違いを意識してメイゾンは周囲にとんがった対応そしてしまう。差別的な子がいる一方、素直に接してくれるルームメイトのサンディのような子もいる。先生たちはメイゾンの立場を理解して応援してくれているし成績では断然トップクラスだ。クラスで『青い眼がほしい』を読もうと提案して受入れられた時、黒人の主人公を一番理解できているのは自分だと感じながらみんなが思いがけないほど作品を深く理解したのに驚く。だが、メイゾンは自分の場所が見つけられない。黒人だけのグループはイヤ、かといってどこに行けばよいのか? 結局、メイゾンはわずか1学期で学校を去る決心をする。勝ち気で向学心があるメイゾンが自分の学ぶ場所をどう見つけていくのか? ちょっぴり心配。

マーガレットとメイゾン マディソン通りの少女たち1

 

マーガレットとメイゾン―マディソン通りの少女たち〈1〉 (ポプラ・ウィング・ブックス)

マーガレットとメイゾン―マディソン通りの少女たち〈1〉 (ポプラ・ウィング・ブックス)

 

 マーガレットとメイゾンは幼なじみの親友だ。だが、二人の人生には少しづつきしみが出始めている。マーガレットの父の死、そして優秀なメイゾンが青い丘(ブルーヒル)学校への黒人奨学生として入学が決まるという変化だ。奔放なメイゾンにふりまわされるようにひかれるマーガレット。プライドが高いメイゾン。迷いながらも自分を見つめていくマーガレットの姿が魅力。

さよなら、おばけ団地

 

さよなら、おばけ団地 (福音館創作童話シリーズ)

さよなら、おばけ団地 (福音館創作童話シリーズ)

 

 桜が谷団地ができたのは六十ほど前。古くなって取り壊しが決まっています。だから住民もどんどん減っています。旧団地はもう無人で、おばけ団地とよばれています。そんな団地を舞台にした不思議な物語の連作短編。おばけという言葉で「学校の怪談」みたいなものをイメージして手にとった子は、いい意味で裏切られると思う。例えば学校の怪談風のうわさが実はとても明るい物語であることが明かされていき、しかも団地建設以前からの不思議な存在が活躍するようすが楽しい。いわば、あまんきみこさんの「車の色は空の色」のような雰囲気のおはなし。ただ、旧団地は60年、新団地は40年ほどなのに作り直しという設定はちょっとびっくり。私が住んでいる団地は築37年ですが、まもなく大規模修繕を行う予定。新団地位は大規模修繕でもう少し使ってもらいたいと余計なことを考えてしまいました。

七人のシメオン ロシアのむかしばなし

 

七人のシメオン (世界のむかしばなし)

七人のシメオン (世界のむかしばなし)

 

 顔かたちも名前もおなじだけどそれぞれ特別の力を持っている七人のシメオン。「天まで届く柱を建てる」「その柱に登って四方を見まわせる」「船を造って大航海ができる」「弓の名人」「星占い師」「一日で収穫ができる農夫」「笛の名手」。それぞれが力を合わせ、王さまの命令で遠くの島の美しいお姫さまを連れてきますが、いじわるな司令官がそれをじゃましようとします。特殊能力を持つ兄弟が、力を合わせてすてきなことを成し遂げるお話は、子どもたちに常に人気。絵の雰囲気もわるくありません。ただ、悪者が司令官なので、王さまはちょっととばっちりかも!

ルドルフとスノーホワイト

 

ルドルフとスノーホワイト (児童文学創作シリーズ)

ルドルフとスノーホワイト (児童文学創作シリーズ)

 

 ルドルフシリーズも4作目。タイトルを見て、いよいよルドルフ初恋か? と期待したが、ちょっと違った展開となった。今回は、ブッチーの子どもたちが物語のカギだ。まずブッチーが大けがをする事件が発生。実は引き取られたわが子の様子を見ようと、他の猫テリトリーへと入ってそこでケンカをしてしまったのだが、真相をさぐるために向かったルドルフが出会ったのがメスネコのスノーホワイト。この地区のボスでけがをした兄猫の代わりにルドルフと対決する、きっぷのいいアネサン風ネコだ。無事に真相がわかり仲良くなったのもつかの間、今度はブッチーの娘チェリーが行方不明となる。中華料理屋の配達車に乗ったらしいことを突き止めて、車で横浜へ! 向かうはルドルフとスノーホワイトとなった。相変わらず、いろいろなアイディアで危機を潜り抜けていくルドルフ。ただ今回は新たにスノーホワイトと出会うものの、ルドルフの大きな変化は感じなかった。1巻目では新しい友人イッパイアッテナのために闘い、2巻目では自分の居場所を再確認し、3巻目で自分らしさに気付いたルドルフ君。今回はその延長くらいかな? 読んでいると、どこかお行儀のいいルドルフが安心できる友人として身近になってくる気がする。

ルドルフといくねこくるねこ

 

ルドルフといくねこ くるねこ (児童文学創作シリーズ)

ルドルフといくねこ くるねこ (児童文学創作シリーズ)

 

 ルドルフシリーズ3作目。前作でルドルフたちに挑戦に来たものの逃げ帰った市川のドラゴン兄弟と称する3匹の猫からのSOSで物語が動き出す。強くて凶暴な謎の犬が市川であばれ、ドラゴン兄弟の家のダックスフンドのモンタが襲われ、助けようとしたブラッド(兄弟の一匹)も重傷を負った。その反撃のために救援を求めてきたのだ。かくしてイッパイアッテナが助太刀にむかい、三兄弟のテリーが人質ならぬ猫質として残るといいだした。謎の犬の正体と、その犬の意図は? のらになったブッチーの新たな人生(猫生?)、テリーとの友情など、ちょっととぼけた味わいを持ちながら今回も楽しく読ませてくれる。そして冒頭で出てくる「I am a  boy.」という英語のテキスト表現のばかばかしさがバッチリ伏線になっているところなど、安定感があり楽しく読める。