- 作者: C.ウォルター・ホッジズ,神宮輝夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1977/12/12
- メディア: 単行本
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概要
「アルフレッド王の戦い」の続編。
サクソン人の王アルフレッドがウェシックスを統一し、異民族との戦いにひとまず終止符を打つまでの経緯が描かれる。
デーン人のグスルム王はアルフレッドとの戦いに敗れ、再起を狙う。グスルムの陰謀で、アルフレッド王は窮地に陥り、辛くも逃れる。
アルフレッド王はサマセットの沼沢地に密かに陣を築き、兵力を再結集させ、グスルム王の軍勢と最後の決戦に臨む。
グスルムは敗北し、キリスト教に改宗。以後、二度とウェシックスに侵攻することはなく、デーン人とサクソン人が平和的に共存する時代が築かれる。
感想
読み始めは、前作「戦い」に比べてずいぶんもたもたした感じがした。
人間関係が複雑になり、とりあえず歴史の講義を受けているような感じ。
しかし、後半、最終決戦に向けた怒濤のような展開に突入すると一気に読めた。
翻訳文体もなにやら軍記物調で、そういう美しさはあるものの、前作のような入り込みは難しいのかも知れない。
古典叙事詩を読んでいるような感じ。
作者が劇作家ということもあり、映画を見ているような、場面の作り方(古代の巨大な白馬の絵を背景に軍勢が進んでいく、とか)が確かに非常に上手。リドリー・スコットあたりが監督をすればきっとさぞ血なまぐさい臭ってくるような映画ができるのであろう。
有名な、パンを焦がしてしまう場面も、有名な歴史エピソードをどう肉付けし、意味のある場面に書き換えるか、という見本のような出来。
確かに優れた本だが、前作にもまして、読者を選ぶ。だれか琵琶でも弾きながら歌ってくれたら、とても印象的な物語になるだろう。