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ピーターサンドさんのねこ

ピーターサンドさんのねこ

ピーターサンドさんのねこ


ホタル島には、夏の間都会から、たくさんの家族が避暑に訪れる。そして、避暑にきた人びとは、別荘の準備が整い、ひと段落つくと決まって、猫がいたらいいのに…と思いつくのだ。そこで、人びとはホタル島にいる猫を捕まえ、一夏の間だけ飼うのだが、帰る時には猫のことなどすっかり忘れている。しかし、ホタル島の猫たちは、みなピーターサンドさんが面倒をみており、

どんなに、避暑にきた都会の人々が猫たちをほったらかしたとしても、大丈夫なのだった。しかし、ある夏のこと、ピーターサンドさんが大怪我をして、島を離れたことから猫たちに大変なことがおこるのだった…。


可愛らしい絵柄にもかかわらず、物語自体は酷くシビアな内容。さすがに、百枚のドレスの作者だけはある作風だ。

ようは、無責任に生き物を自分の都合だけで飼おうとする人たちに対する怒りと警告を描いているようにも思える。


無口な、ピーターサンドさんの、

ブラッシュ夫人を代表とする街の人々に対して、居なくなった〔死んでしまっただろう〕猫たちの無念さを代弁するかのように、語りかける言葉は威厳がこもっているのだ。


しかし、この物語にもきちんと希望が残されていて、メイベルという女の子と、一匹の子猫によって物語は変化して行くのだ。戦争の影も物語に多少存在し、低年齢向きというよりは高学年くらいが受け入れやすい内容なのかと感じた。

とはいえ、低学年でもこの作品の魅力に引かれるだろうし、作者の怒りもきちんと伝わるのではないかなと思う。