児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

課題図書 有松の庄九郎

 

有松の庄九郎

有松の庄九郎

有松の庄九郎

2013高学年向き課題図書。江戸時代初期、尾張(名古屋)の貧しい村で、自分の田畑を持たない二男以下の百姓たちは、東海道沿いの新しい村への移住を決意する。開墾した土地は自分のものになるというが、あたりは松ばかり。有松と名をつけ、松林を切り開くが、土壌が悪く、懸命に開墾しても実りがえられない。街道沿いという特性を活かし、草鞋や団子を売り始めるが、大きな収益は見込めない。だが、リーダー格の庄九郎は、名古屋城普請で見かけた藍染めの手拭いに目を付けた。苦労の末、独特の有松絞を開発し、移住者たちは、活路を開く。実話に基づいた物語を、現代っ子のカオルがおばあちゃんから聞く、という構成になっている。この作者は『天游』もそうだが、読みやすく、達者だが、善人によるハッピーエンドで、主人公の相手は、たおやかな美女。児童文学、という点を考慮しても、もう少し魅力的な悪役とか、美しくない妻とか居て欲しい。また、挿絵があるのに、有松絞についての挿絵がない。感想文を書くなら、有松絞りの実物を調べて、調べ学習風に、自分のイメージと実際の違いなどを書くとよいかも。