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タンギー

タンギー―「今」を生きてきた子どもの物語

タンギー―「今」を生きてきた子どもの物語

(対象中学2年生以上)

スペインの名家に生まれたが社会活動家に転じた母。そんな母を疎んじてフランスに行った父。スペイン内戦で母と共に父のいるフランスに亡命したタンギーは、父の密告のせいで捕えられる。脱出をはかるが、タンギーだけがつかまり、ドイツの強制収容所へ送られた。思想犯で捕まったドイツの青年ギュンターに守られ、人を憎まずに生き抜こうと決意するが、ギュンターは「選別」されてしまった。終戦によりスペインに帰るが、祖母が死亡。孤児院に送られるが、そこも暴力が支配する地獄のような場所だった。やっとのことで脱出し、マドリッドで新しい孤児院へ入った。そこは優れた教師と思いやりにあふれていた。だが、父に会いたい思いにかられそこを出発。父から受け入れを拒否され、セメント工場にやっと職を見つける。体を壊すほど働き、ついにフランスに密入国同然にわたる。迎えてはくれるものの、見栄とお金にとらわれる弱い父に失望してたもとをわかつ。わざとらしいほどの過酷さだが、作者のほぼ実体験というのが驚き。「戦争には勝者はいない」という冷静さはみごと。お薦めといえるかは微妙だが、波乱に満ちた半生は、読んでしまう。