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希望のいる町

希望(ホープ)のいる町

希望(ホープ)のいる町

腕のいいシェフである叔母のアディと暮らす、少女ホープ。ホープは、食堂でたくさんの大人たちを相手に食事を運ぶウェイトレスであり、その仕事に誇りを持っている。しかし、そのウェイトレスの才能は、自分を捨てた母親の才能を受け継いでいるのであり、そんな母がつけたチューリップという名前が嫌で仕方が無い。名前をホープ(希望)と変えた彼女は、自分の存在が周りの人にとって希望ある存在でありたいと意識し出していた。

そんなある日、白血病の経営者が、アディに店を任せたいという要望があり、その店のある街に引っ越すことになった。

そこのオーナーGTは、癌治療を受けながら、店はアディに託し、自分はその街の市長選に出馬するという思いもよらぬ意志を聞かされる。

しかし、GTの考え方や人柄に好感を抱いたホープは、彼の選挙活動を手伝い、街の人々と繋がって行く。


ティーンエィジャーがみた、選挙活動、政治、仕事、恋、家族という新しい切り口の物語。主人公ホープがあまりにしっかりとした大人な風情なため、読み手は共感しずらい部分があるかもしれないが、周りの大人たちがとても魅力的な存在なので飽きさせない。若干、選挙についての描写に中だるみ感はあるものの、選挙日あたりからのエピソードには、緊張感があり面白い。

同じ著者作品の『靴を売るシンデレラ』ほどの、プロフェッショナルぷりとエンタメ感は無いので、地味な作品ではあるが、選挙と働くことをクローズアップした特殊性は興味深かった。