児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

賢者ナータンと子どもたち

賢者ナータンと子どもたち

賢者ナータンと子どもたち

1191-92のエルサレムが舞台。豊かなユダヤの商人ナータンは、かつて妻と7人の息子を殺され、全ての財産を失った。だが、復讐の思いを捨て、養女レーハを慈しんでいる。そのレーハが火事で危険にあったときに救ってくれたのは、テンプル騎士団の若き騎士。それは、イスラムの王サラディンが兄の面影を見て、唯一命を救った騎士だった。キリスト教以外を穢れたものとみるエルサレム大司教。サラディンの寛容を理解できないイスラム過激派の司令官アブ・ハッサン。「キリスト教、ユダヤ教、イスラム教のうちどの宗教が最も偉大か」と、問われたときに、ナータンは、父が3兄弟に与えた三つの指輪のたとえで、戦いではなく愛を説くが、結局命を奪われる。レーハと騎士の愛の行方は? ナータンはなぜ、そんなにも憎しみを克服できたの? ともっと描いて欲しかったが、宗教の違いを越えて許しあうための課題、この物語の結末を導くのは私たちかも。