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灰色の地平線のかなたに

 

灰色の地平線のかなたに

灰色の地平線のかなたに

 

 

第二次世界大戦下のリトアニア。大学教授の父を持つリナは、家から連れ出され、母と弟と共に列車に乗せられ、ロシアへと連行された。過酷な旅は、弱いものから命を奪い、農場での強制労働に処せられ、してもいない罪を認めることを迫られる。常に思いやりをもち、極限の中でも人と分け合うことを選ぶ母。気になる男の子アンドリュスの母は、息子を守るため、ロシア兵の娼婦役になろことを甘んじる。絶望的な中で、誇り高く、絵への情熱を忘れないリナ。書かれることが少なかったソ連の東欧3国迫害の歴史を描きつつ、人間の尊厳を考えさせてくれる。

余談だが、この物語のはじめのころ、貨車に詰め込まれ、どうなるかわからない状態の時に、一人の図書館員が電車内でストリーテリングをするシーンがある。1940年代に児童サービスでストリーテリングをしてるリトアニアすごすぎ!本当? こういう図書館員になってみたいけど、無理そう!!と思いました。