児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ドレスを着た男子

ドレスを着た男子 (世界傑作童話シリーズ)

ドレスを着た男子 (世界傑作童話シリーズ)

主人公のデニスは、サッカーの好きな学校でも友達の多い方の普通の男の子。そんな彼がある日雑貨屋からおこずかいを貯めて買ったファッション雑誌を読み、女性のドレスに心を惹きつけられた。なぜならその雑誌に載っていたのは家を出ていてしまった母親が来ていたワンピースととても似ていたドレスを見つけたからである。そのうち女性の着ている服が美しいと心を奪われる。そんなデニスはある時学校で、上級生でおしゃれで有名なリサという女の子と友達になった。彼女は自分で素敵な洋服を作ることができ、彼女の部屋には素敵なドレスがたくさん!ちょっとした悪ふざけからリサはデニスに女装させて街を歩かせる遊びを思いついた。やがてデニスは女装で学校に行くということも試してみた。しかしこれがとんでもない事件なるとは思いもよらずに…

素敵なものは素敵だし、着たいものを着て何が悪いのか?男らしさ女らしさを強調してしまうとまるでジェンダーな意味合いを持つ作品に取られがちだが、そこまで気負っていないところがとてもこの前物語を面白くしている。
ちょっと変わった友人のお母さんや雑貨屋の店主や、父親など、デニスを見守る周りの大人達の眼差しがとても優しい。最後の校長先生の女装に関してはちょっと無理やりな感じもしなくもないが、オチとしてはこんな感じが妥当なのでしょうか。
性同一性障害の扱いというよりは、美意識が高い男の子の女装癖の話という感じ。(デニスはリサのことが好きだから、セクシャリティとしてはいたってノーマル)
最初の、家を出て行ったお母さんの件は、確かにデニスの心に穴をあけたけれど、でもこれって別にお母さんが出て行かなくてもデニスは女装するとは思いますけどね。