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ふたつの月の物語

 

ふたつの月の物語

ふたつの月の物語

 

 養護施設でそだった美月と、拾われてお寺で育てられた月明(アカリ)。二人は突然、資産家の老婦人、津田に引き取られる。互いを知らずに育った二人だが、二人にはそれぞれ、不思議な力があった。夜になると青く光り、闇を見通せる瞳。そして美月は異様に鋭い嗅覚をもち、月明は危険が迫ると“とんで”しまう、という特殊能力がある。老婦人の別荘のそばにあるダムの底に沈んだ村。そこには、大口真神(狼)を祭る神社と、死者をよみがえらせる神事が伝えられていた。神事に必要なのは、村長・神主・巫女・守り番の4人。二人は、自分たちが村長の血筋であり、必要な4人が呼び集められていることを知る。二人の母は、弟の魂呼びの贄として真神の妻となり、二人を生んだのだ。そして津田夫人は、死んだ唯一の肉親である孫をよみがえらせるために、二人の力を借りようとしていた。
謎が徐々に判明するところ、本当に神事はなるのか、というサスペンス要素がなかなか良いが、妙におどけキャラの月明や、他の協力者との津田とのかかわり、二人の特殊能力はこの後? など、微妙に収まりが悪くも感じる。本格ファンタジーとするにはもう少し書き込みが必要そう。ただ、よみがえりの限界についてきちんと解決した結末は説得力がある。