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ロバートは歴史の天使

 

ロバートは歴史の天使

ロバートは歴史の天使

 

 概要

14歳の少年ロバートが次々とタイムスリップしていく話。スターリン体制下のロシア、1946オーストラリア、1930ドイツ、1860ノルウェーといった具合。どうも絵を見ていると、その絵の中に飛び込むような形で次々と移動していくらしい。言葉も通じず、そこがどこかもわからないままに、少しずつ適応していく。あるときは宮廷に、あるときは居候に。行った先での生計はそこそこに立っていくが、時には滞在は数ヶ月以上にも及び、ロバートの旅は何年も果てしなく続くように思われる。

感想

どうもね、のらなくて、読み終わるのに大変手間取りました。

タイムトラベル物はたくさんあるのだけれど、どうもうきうきしない。うきうきしないのは構わないのだけれど、前にも後にもつづかないままに、時代だけがコロンと変わって、一からやりなおし、その繰り返しって言うのは物語としてはいかがなものか。物語が終わってみても、あの人たちはどうなったんだ?という疑問は何一つ解消されず、ロバートも何か成長したってわけでもない。

ただ、歴史の各場面でのリアリティーというのはそれなりにある。中世の匂い、とか、19世紀の人たちの不安とか、あまり明るくはないのだが、それぞれの時代ごとに感じていたであろう重苦しさとか、不自由さみたいなものを、ある意味実感できる。

飛んでいく時代が、華々しいところでなくて、すごく地味な選択であるのもいい感じ。日本でこういうのを作ったら、どのへんかなあ、と考える。タイムスリップして、信長に会いにいく、ではなくて、長篠の合戦で負傷した名もない足軽の実家へ行く、みたいな。タイムスクープハンターですね、これは。

「数の悪魔」の著者の2番目、今度は歴史、ということらしいのだけれど、評価は微妙です。