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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

銃声のやんだ朝に

 

銃声のやんだ朝に

銃声のやんだ朝に

 

今日もクリスマスものを紹介します。

第一次大戦のクリスマス、イギリス兵とドイツ兵がサッカーをしたという史実に基づく物語だが、安易なヒューマン・ドラマとは一味違う。17歳のジャックは、友人のハリーと共に、なりゆきで軍隊に入隊手続きをしてしまう。西部戦線に投入され、飢えながら泥の中の銃撃戦が続く。いばりちらし、若者を軍隊に追いやる校長や、自分たちだけが優雅に暮らし、無能な作戦で死者の山を築く将校。最前線に送られて死んでいくインド兵。疲れきった厭世気分は、勝手にクリスマス休戦を結ばせる。歌を歌いあい、徐々に近づき、ついに交じり合ってサッカーの試合が始まるさまは自然。だが「もう戦いたくない」と訴える兵は処罰され、戦争は再開。ハリーは命を落とす。ごく普通の若者が、望まぬままに、自分ではなにもしない人間たちによって死に追いやられていく様は、あまり類書もなくおすすめ。