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議会への使者

 

議会への使者

議会への使者

 

 概要

清教徒革命時代のイギリス。クロムウェルに因んでオリバーと名付けられた主人公は、母の死後、のんだくれの父親と一緒に議会軍に従軍しながら放浪する。カトリック中心の国王軍と、清教徒中心の議会軍は、それぞれの正義を盾に戦っているはずだが、戦場の実情はそのようなものではなかった。父とはぐれたオリバーは同じような立場の少年たちの一団について議会派の支配するロンドンに行く。途中で、ジャックという少年と友達になるが、ジャックはオックスフォードの牧師の息子で、父親は国王派。彼には彼の考えがあって議会派に投じているらしい。自分にはわからぬ信念をもったジャックに、オリヴァーは心酔する。ロンドンで議会派の印刷屋に拾われたオリヴァーとジャックは議会派の使命を帯びてオックスフォードに行く。さらに、議会派の秘密の書簡を託されてケンブリッジのクロムウェルに届けることになる。しかし、ジャックは途中で負傷。代わりにオリヴァーが任務を果たし、クロムウェルの元で、小姓となるまでが描かれる。

 

感想

またしても、いったいこれは何歳なら読めるのだろうかな、という疑問。

手に取るまで、私でもずいぶん時間のかかった本。オリヴァーの生い立ちとか、母との関係とか、あれやこれやで、話に加速度がつくまで長かった。一度転がり出せば、秘密の使命を帯びた冒険行、次から次にと現れる敵、間一髪の大脱出、など、ジェットコースターのような展開もあるのだが。しかし、清教徒革命時代のわかりにくさといったら。「ちょっとピンぼけ」の時も思ったが、戦争の最中の混乱というのは、中にいる当事者には全く何が起きているのかすらわからないのだから、そういうものだと思って読めば、なるほど、戦争というのはこういうものかと分かる。しかも、現代の知識をもってもう一度俯瞰してみても、やっぱり何がなにやらわからないのだから始末に悪い。日本で言えば、応仁の乱とか、建武の新政とか、ああいう感じかな。

西と東が戦って、西が負けた、とかそういう、わかりやすさがまるでない。

この本には、オリヴァーが成長していくその後の物語「クロムウェルの使者」という続編があるらしいが、結局未訳のままと思われる。たしかに、日本の子どもにはちょっとハードルが高すぎたか。

物語全体は、年老いたオリバーが、少年時代を振り返って語る、という構成だが、おっと、このときオリバーは55歳だ。