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キルト ある少女の物語

 

キルト―ある少女の物語 (必読系!ヤングアダルト)

キルト―ある少女の物語 (必読系!ヤングアダルト)

 

 妻を亡くした28歳のアンソンの後妻になることを勧められる18歳のネル。大学に行きたいが、家にはお金がない。貧しい父さんと結婚したために、母さんは働きずくめだ。アンソンは悪い人ではない。だが、結婚をOKした日から、ネルは食べられなくなり、キルト作りに取り付かれる。おばあちゃんの形見の布で、一針一針縫い続ける。同い年くらいの小作人の妻ルーディは、孕み、流産し、人生を憎んでいる。幼なじみのロブは「結婚するな」というけれど、助ける力はない。ついにネルは倒れ、結婚話は妹のエリザに行くが、もう起き上がれない。キルトの布も形見ではなく、手芸屋のセット品だった。だが、死しか残っていないと思った瞬間、ネルは生を願う自分に気づく。 ナイーブな追い詰められた少女のドラマ。「生きたい」と願うラストは、いい。

しかし、時々思うんだけど「こうするといい」というまわりの思いは、意外にからまわりの時もあるのよね。そしてたいていは、別な道を行ったとしても、そんなに困ったことになるわけじゃない。だけど、じゃあ、思いをかける人もいないのもさびしいもので、とかく人生は難しいです。