概要 北ドイツの田舎町のある高校のクラス。新任の歴史教師はナチス時代を取り上げる。折しも、町の誕生700年祭を祝う出し物として、歴史の展示を行うことになり、生徒たちは調査を開始。市役所の文書庫を訪ねたり、老人たちにインタビューしたりして、ヒトラーの時代を調べていく。ただの田舎町で、ヒトラーなど来なかったはずのこの町でも、ユダヤ人の迫害や、捕虜収容所・強制収容所と虐殺の歴史があったこと、当時の当事者は今も生きていて、それぞれの思いを持って生活していることが明らかになる。展示は見事に仕上がるが、お披露目の前日になって、校長・教頭は展示を撤去。逆にそのことがマスコミに取り上げられ、騒ぎを引き起こす。
感想 善玉熱血教員&生徒たちVS悪玉小役人校長・教頭の対決、というような図式は心地よく裏切られる。もちろん、校長・教頭のしでかした事は相応の報いを受けるし、校長は素直に負けを認め、それなりに感動的な挨拶を生徒たちに送る。でもそれは、ある種の大人の智恵というか、妥協というか、なんというかスカッとはしない。校長や教頭、かつてのナチス党員にもそれぞれの論理があり、事情があり、思いがある。生徒たちも、歴史教師も、必ずしも正義の側に立っていたわけではない。そういうガラス細工のような人の営みの上にこそ、ナチスをはびこらせた背景があったのだとわかる。歴史認識論争については、今の日本の状況にもそのまま通じるものがあって、とても役に立つ。
とはいえ、やはり読者は高校生以上だろう。