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真夜中の動物園

 

真夜中の動物園

真夜中の動物園

 

 

装丁に惹かれて手に取った本。物語は「夜」の描写からはじまります。「夜」は白く光る月のランタンを手に下界を見下ろしていると2人の男の子を見つけました。兄のアンドレイと弟のトマスは麻袋にくるんだ妹、赤ん坊のウィルマをかかえ廃墟の村を歩いていました。3人の兄弟たちはさまよいたどりついたのは世話する人間がいなくなった動物園でした。そこで突然の爆撃をうけた3人が目覚めると檻の中の動物たちが人間の言葉ではなしかけてきました。動物たちはなぜここが空襲をうけたか村人がいなくなってしまったかを語り始め、子どもたちもまた自分たちが3人だけでさまようことになったかを話しはじめます。

 

侵略国の兵士たちが兄弟たちの民族を突然襲い、おそらく子どもたちの母親やすべての人は殺されてしまったのだろうと想像できる場面は読んでいてつらいものでした。

動物たちは戦争のせいでエサもなく不衛生な檻に閉じ込められたのは人間のせいだといいます。厳しい現実がかかれていますが冒頭の「夜」の描写や言葉を話す動物たちがそれぞれ個性的でそこだけがホッとできる部分でした。

終わりは兄弟も動物たちもどうなったのかははっきり描かれていません。

女の人が突然現れトマスはおかあさんだと思い、アンドレイは聖人「黒いサラ」だと思い、動物たちは大好きなアリスが来たと思います。女の人が両手をさしだすところで物語は終わるのですが、それぞれの大切な存在が助けに来てくれたというようにも、みんな死んでしまったのかというようにもとれる終わりでした。