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ジャック・デロシュの日記

 

ジャック・デロシュの日記 隠されたホロコースト (海外文学コレクション1)

ジャック・デロシュの日記 隠されたホロコースト (海外文学コレクション1)

 
ページをめくると、明らかに精神の安定を失い、ひたすら食べ物を口に運び、その直後に吐き出すことを繰り返す少女エマが、万引きで捕まる場面から始まる。
この現代を生きている少女が、過去の戦争とホロコーストの犠牲となった歴史を、ある若者の日記によって、当時の狂った状況を見つめる構成になっている。
その過去へ引きずりこまれていく媒体になったのは、エマの祖母との親密さと死、また周囲からの孤立感が大きく影響されている。
 
他人の日記を読む背徳感、またその残酷な歴史をナチス側に傾倒していた若者の日記から知るという意外性、また現代のエマを物語る文体も入りやすく読みやすい。
 
心理的な圧迫感や拒食症になりうまくかみ合わなくなる主人公の内面描写が丁寧なので、過去と現在の物語の進行は、両者ともに読み応えがあり、どちらかが退屈に感じることもない。