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ぼくたちの骨

 

ぼくたちの骨

ぼくたちの骨

 

 走るのが大好きな千里は中学3年で陸上部だが、偏平足からくる足底筋膜炎のせいで、走るのを止められている。幼馴染の小木春人は、そんな千里の焦りを見透かすかすように新聞部に誘ってくれた。入部するつもりはないものの、思い出の動物園の閉園の取材に立ち会い、見捨てられたような小屋にあった不細工なひょうの剥製と出会う。戦時中に死に、稚拙な技術ではく製にされ、走れるようには見えないひょうの姿に、千里は思いがあっても走れない自分を重ねる。おりしも、戦時中に殺された動物展のため、古い剥製が修復されることになり、千里は期待する。修復の現場に行き、修復にあたっている水谷と会い、様々な個体の姿を留めるため剥製にする意味を考える。最後、治療の効果があらわれ、走れる期待の中で終わる。淡々としているが、迷いの中の千里の気持ちの描き方は悪くない。ちなみに立派な学芸員水谷さんのモデルは、実際は非常勤職員というのはキビシイ現実ですね。