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戦争がなかったら

 

戦争がなかったら 3人の子どもたち10年の物語 (ポプラ社ノンフィクション)

戦争がなかったら 3人の子どもたち10年の物語 (ポプラ社ノンフィクション)

 
カメラマンの著者が、内戦のあったリベリアの子供たちと関わり、見守り、写真展や新聞などで得た寄付を元に、復学させたり、仕事のためのミシンを寄付したりとちからをつくす。しかし、寄付の難しい現実と、子供達の精神的トラウマという根源的な問題にぶつかり戦争のもたらす絶対的『悪』について描いているノンフィクション。…とか、書くとまっとう過ぎて読む気が失せる人も多いだろうが、アフリカで、アルカイダ系の武装集団に学校から誘拐された少女たちはどうしているのかなど、インタビューをしている、モモ、ムス、ファトゥを通しながらついつい考えてしまった。これは、別に特別なことではないし、今だって起こっている現実。日本だって例外ではないかもしれない。
 
著者がこの本の中でも、特に思いいれがある子供は、間違いなくムスという右腕を失った少女だったとおもうのだが、何故か最初に出してきたのはモモという少年兵士であり、内戦後も職もなく仲間とじっとしている彼の現実を、前半に持ってきていた。
 
モモと最後の章に出てきた、ファトゥという『早殺し』とあだ名がついた少年兵士に、力点をおいていることからもわかるが、奪われてしまった子供は勿論不幸だが、何かを大人の都合で奪い取ることを強制された子供も、それ以上に不幸だと言いたいように思えた。
子供の時間と、希望を奪われたことは、加害者であっても同じなのだ。しみる。