児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

15の夏を抱きしめて

 

15の夏を抱きしめて (STAMP BOOKS)

15の夏を抱きしめて (STAMP BOOKS)

 

 僕は交通事故で死んだ。だが、僕は呼び出される、心から愛した少女オルフェーに、悲嘆にくれるママに、もう僕の近くまできているおじいちゃんに。以前の失恋の後、心を閉ざしていたオルフェーに僕は少しずつ歩み寄っていった。僕との思い出の品々を燃やしても、僕の姿は消えない。ママは、パパさえ拒否して、僕の部屋を僕の神殿にしている。そして、おじいちゃんは、これまでもそうだったように、僕に物語を語る。しだいに明かされていくおじいちゃんとママの葛藤。おじいちゃんと、その父親の葛藤。妻を失ったことから立ち直れなかった曾祖父、やはり妻を失い、娘にさえ、それを物語にしてしか語れなかった祖父。死んで理想化されてしまった僕の、本当の姿は? 悲嘆の中で前に進むとはどういうことか? 悲嘆を引きずりながら続いていく人生をまっすぐ見つめる姿がいい。