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サースキの笛がきこえる

 

サースキの笛がきこえる

サースキの笛がきこえる

 

 妖精の換え子を、換えられたその子の立場から見るというユニークな物語。妖精の塚に迷い込んだ人間と妖精の間に生まれたために、妖精としては不完全なモックル。妖精の世界から追い出され、人間の家に送り込まれサースキとして育つ。賢い祖母のベスは、換え子であることに気付くが、母親は、やっと授かった子が換え子であるとは絶対認めない。カンの強い育てにくい子であると手を焼きながらも必死で育て、ベスも見守る。次第に妖精の世界を忘れて育つが、周りの子供たちと異質過ぎてなじめない。祖父のバグパイプを見つけて夢中になる中で、荒野に住む鋳掛屋の弟子タムと仲良くなり、初めて友達ができる。だが、村に病気がはやったとき、村人たちはサースキのせいにしようとする。サースキは、逃げなければならなくなるが、その前に、母のために本当の娘を妖精の塚から取り戻そうと決意。夏至の夜、塚への潜入を図る。居場所のないサーキスの切なさと、そのサーキスを懸命に受け入れる両親。しっかりと後ろで見守る祖母のベスの関係は、普遍的な思春期思いとも共通するかも。