親からひとりだちしたきつねは、人間の近くで暮らすことを選んだ。注意が必要だが、他の狐と縄張り争いが避けられる。徐々に人間の言葉を理解するようになったきつねは、白駒山の仙人のところで、修行した狐は人間に化けるという話をきき、白駒山に興味を持った。人間の世は戦争が起こり、きつねは、その中で一人の心惹かれる武将に命を救われたのち、白駒山に向かう。仙人は確かにいたが、厳しい修行など不要だという。きつねは、ただ、人間の所作や文字をならい、その中で人間に化けられるようになった。ある日、ふとふるさとが懐かしくなったきつねに、仙人は白狐魔という名を与え家に帰す。きつねは、途中で、かつて自分を助けてくれたのが義経であることを知り、偶然出会った一行と、ひと時を共にするが、兄弟で争う人間を見、自分の家族も、すでにそれぞれに生きていると思い、そのまま、放浪を続ける決意をする。
するすると読めるが、心惹かれるのが、厳しい修行をばかにする仙人の存在だろう。そのリアリティが、きつねが人間になれる説得力につながっている。だが、白狐魔は、「観察者」のようで、影が薄い。この後どうなるのか? このままいったら、ちょっと・・・物足りなさそう。