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烏に単は似合わない

 

烏に単は似合わない

烏に単は似合わない

 

上の表紙画像は、この物語に登場する4人の姫。主人公は誰か、たぶん一目でおわかりになるのではないか?

 マンガには文法がある。幼い日に出会った憧れの人、控えめで無邪気な主人公は、長じてその人に再会し結ばれる・・・。この文法に沿えば、主人公は春殿の主あせびとなる。そう、表紙画像左上の、ほのぼのニッコリ少女である。舞台は、人が鳥に変ずることもある異世界。金鳥とも呼ばれる宗主の妃をきめるために4人の姫が呼び寄せられる。本来は二女で予定がなかったのに、長女の急病で、急に登殿することになったあせび。夏殿の浜木綿は、宝塚の男役風美女(だが、なぜか妃への意欲がみられない)、秋殿の薄は、華やかな美女で派手好み。冬殿の白珠は清楚の極みの美少女。他の3人に引け目を感じながらも、懸命に過ごすあけび。さて、ここから物語は徐々に定型からずれていく。主人公の敵役?のはずの3人が、徐々に魅力的になっていくのだ。サバサバとして状況を見極めて対応策を考える浜木綿。意外にも弟思いの優しいお姉さんの顔を見せる、縫い物上手の薄。そして家のために、初恋の人との別れに耐えてきた白珠の健気さ、しかも肝心の若宮は一向に姿を見せない。そこに殺人事件が発生! 本作が第19回松本清張賞受賞というのも、納得。この手があったのね。いわゆる文学作品というわけではないので、『空色勾玉』を期待するとはずれますが、ちょっとジャンクなものや、本格ミステリーにも手を出す私は、それなりに楽しみました。