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英雄アルキビアデスの物語=上

 

英雄アルキビアデスの物語〈上〉

英雄アルキビアデスの物語〈上〉

 

 紀元前5世紀後半ギリシア。シチリアに進軍しようとする艦隊を率いるのは若き指導者アルキビアデスだった。だが、混迷するアテネ衆愚政治の中で、彼は政敵により失脚させられる。選んだ亡命先はスパルタ。彼のアドバイスによって、スパルタはアテネを圧するが、スパルタ王妃と姦通し、王妃は妊娠。アルキビアデスはペルシアへと逃れる。神のごとき英雄が存在した時代に、その多面的で謎に満ちた姿を、「市民」「船乗り」「兵士」「遊び女」など様々な人物の目に映る姿で描く。

男の集団で暮らしてきた王が、新婚初夜に、新妻に怯えを感じそのまま逃げ出す姿と、自分を満たしたいと思いをあふれさせるスパルタ王妃のワンシーンなど、映像で見たように生々しい。サトクルフは、最少の言葉で、どうしてこんな描写ができるのか、やっぱり天才です!