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ふたりのエアリアル

 

ふたりのエアリエル

ふたりのエアリエル

 

 ソレル、マーク、ホリーの3兄弟は早くに母を亡くし、海軍士官の父だけだった。だが、父の戦艦が行方不明となり、一緒に暮らしていた牧師の祖父もなくなってしまう。その時、実はお母さんはお父さんとかけおち結婚したが、代々続く演劇の名門ウォレン家の出で、将来有望な女優だったことを初めて知る。そして祖母に引き取られるが、祖母は演劇のことしか頭になく、3人を演劇学院へと転校させてしまった。長女のソレルは、祖母が経済観念がないため、家計が火の車であることを家政婦のアリスから聞き、マークの夢はお父さんと同じ海軍将校なのに、と気をもむ。おまけにいとこのミランダは、高慢ちきだが、間違いなく学院でズバ抜けた実力がある。もう一人のいとこのミリアムは、ダンスの才能に恵まれ親切だ。マークには歌唱の、ホリーにもダンスの才能をみせ、ソレルは落ち込んでしまう。そして、全く知らなかった演劇の道へのあこがれが芽生える。そしてチャンスがやってきた。生意気な態度のため役を下されたミランダの代役として、無事に役を務めた。だが、さらに試練が訪れる。『真夏の夜の夢』の空気の精エアリアルを競うことになるのだ。気性が激しいが、間違いなく才気あふれる美しいミランダと、思いやりがあり、芯がしっかりしたソレル。定番として、ここはソレルを応援したくなる。普通の暮らしから、演劇第一の暮らしへと、価値観がひっくり返る戸惑い(そこでは、学業成績など問題にされない!)、行方不明のお父さんへの思いなど、楽しく読ませる。