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地下鉄少年スレイク=121日の小さな冒険

フェリス・ホルマン著 遠藤育枝訳 原生林 1989.8

孤児でいじめられっこのスレイクは13歳。偶然地下鉄の駅の端に空洞を見つけ、そこで暮らし始める。さらに拾った新聞が売れることに気づき、意図的に集めての販売もスタート。彼に同情してくれたコーヒーショップの好意で、掃除をして食事をさせてもらい自立していく。一方、地下鉄運転手ウィリスジョーは、牧場暮らしにあこがれながら、いやいや運転手をしていた。順調に見えたスレイクの暮しは、工事により“家”がふさがれることに。不安から病気になった彼は、電車の前に飛び出して助けを求め、ウィリスジョーが彼を病院に運ぶ。快復した彼は、地下に戻ろうとするが、振り返りその足を留め、空に向かおうと思う。地下鉄のロビンソンという設定が楽しい。干渉しないが、見守ってくれるまわりの大人たちの暖かさ、少しずつ生活を築いていくようすが魅力。