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リフカの旅

 

リフカの旅

リフカの旅

 

 リフカは、5人の兄がいる末っ子だ、ロシアのユダヤ人迫害の危機と、兄の徴兵を恐れた両親は、アメリカへの移住を決意する。3人の大きな兄はすでに移住している。12歳で、いきなり故郷を捨てなければいけないことを知らされる不安の中、プーシキンの詩集の余白に、いとこのトヴァへの語りかけを綴る。だが、途中でチフスを発症。なんとか治癒するが、さらに疥癬にかかり、リフカだけが残される。ベルギーユダヤ人支援施設に一人残る不安。やっと治癒して向かう船の中で、初恋のような淡い思いを抱くが、相手の船乗りは嵐で波にさらわれてしまう。さらにやっとたどりついたアメリカでも、治癒した頭に髪がないため、「結婚できずに、社会にマイナス」とみなされ上陸許可がおりずに隔離病室に入れられる。そこで出会う、口を開かないロシア人の男の子。ロシア人に追い出された怒りをまといながらも、みじめなようすの一人ぼっちの男の子に手を差し伸べずにはいられなくなる。勝ち気で、頭の回転がいい女の子の作者の大叔母のほぼ事実に基づいたという物語。さいごに、「髪がなくても、私は結婚したければ結婚してみせる」とたんかをきって入国を認められ、その時、実は髪も生え始めていることに気付くクライマックスがなんとも魅力的。フェニックス賞受賞。