ルワンダから内戦をのがれてイギリスに来たクリストフは、なかなか学校になじめなかった。中でもいやだったのが物語を読むこと。故郷のおじいちゃんバビは、おはなしは語るものだとおしえてくれた。語る人の後ろには、前に語ってくれた人の姿がある。紙の中に閉じ込められたおはなしなんて気持ち悪いからいやだったのだ。いじわるな4人組に立ち向かい、サッカーをみんなとやるようになった後、おなかの銃弾の傷を見られたことがきっかけで、クラスの前でみんなに自分の体験を「お話し」することになった。みんなは、クリストフの体験と話のうまさに驚嘆する。そして、彼のおはなしを先生が紙に書いてくれたことがきっかけで、紙に書いて伝える意味にクリストフ自身も気づいていく。戦争が起こる理由を「このわたしのほうがおまえたちよりすぐれているのだ、だからどんなものでもわたしがひとりじめしていいんだ。」と思う人間がいるせいだ、と説明してくれるお父さんの言葉はとてもいい。だが、クルストフが自分をいじめる子をなぐったのはよかったのか(なぐれば変わるのか?)、語りへのこだわりなど、もう少し踏み込んでほしいともおもったが、こうした主題の本としてはよくまとまっている。