児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ふたりきりの戦争

 

ふたりきりの戦争

ふたりきりの戦争

 

 敗戦間近なドイツ。兄が戦場で行方不明。反抗した父は収容所に、そして父を助けようと出かけた母も空襲に巻き込まれ行方不明に。14歳のエンヒェンは、田舎の村にあずけられ、それなりに平和な生活を送るが、不安が消えない。村の農家で強制労働に従事しているロシア人アンナと知り合ったことから、占領軍進行で連行される予定のロシア人セルゲイを助けようと思い立つ。銃と刃物を携帯した二人の逃避行には指名手配書が出され。飢えに苛まれて盗みにも手を出す。他人同然の二人が、徐々に不思議な連帯感で結ばれていく。恋愛とも違う二人の関係。感覚が麻痺して子どもを脅して食べ物を巻き上げるようになるようすなどリアル。危機の中の生き方として不思議な魅力を感じる。