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戦争するってどんなこと

 

戦争するってどんなこと? (中学生の質問箱)

戦争するってどんなこと? (中学生の質問箱)

 

 著者は、アメリカ海兵隊員出身で、沖縄駐留経験者。現在日本在住。軍隊は必要だという考えを持ち、志願兵として軍隊経験をおくった経験を踏まえての著書だけにとても説得力がある。まず、兵士としての訓練経験から、軍隊とは人を殺す集団であること、だが、人間は簡単には他人を殺せないため、敵国の人間を人間ではないと思わせる差別用語を使っての洗脳や、自分の頭で考えずに徹底的に服従を叩き込む訓練を行ない、日常感覚を麻痺させるというのは、言われてみれば当然だが衝撃だった。また、軍隊とは、自国民をも弾圧するために使われるとの説明も、確かにそのとおり。戦争が、兵士だけではなく多くの民間人を殺す事実。沖縄が琉球王国から日本に併合され、植民地として住民の意向が無視され続けてきたことが今日の米軍基地集中につながっていることなど、歴史を踏まえ、順々に説明している。さらに、だが、攻められた時のために、軍隊は必要ないか、という問題のために、非暴力の戦いで弱くても平和や自立を勝ち取った事例を複数あげている。中でも、デンマークの事例は、今まで知らなかっただけに驚いた。ヒトラーに降伏はしたが、従わない姿勢を貫いたことで、支配しているドイツ兵士側に影響を与えた事実は重要。急変はしなくても、あきらめず、粘り強い平和の構築のヒントの提案があり、ぜひすすめたい。