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希望の牧場

 

希望の牧場 (いのちのえほん23)

希望の牧場 (いのちのえほん23)

 

 “オレ”は牛飼いだ、だから牛を飼う。そんな簡単なことが、突然できなくなった。原子力発電所津波被害にあい、放射能があたりに飛び散ったせいだ。ここでは暮らせない、牛は殺さなければならない、みんなそういうけどオレは、牛の世話がやめられない。だって牛飼いだもん、やつらはエサをほしがってクソをする。…たった一人で、牧場に残った実在の牧畜業者をモデルにした物語。淡々とした語り口が、逆に不条理な状況への抗議になっている。持ち込まれた牛や野良牛を預かっているうち、徐々に牛が増え、「希望の牧場」と呼ばれるようになっていったというが、これは希望なのだろうか? 未来のない(食用にできない)絶望の牧場かもしれないという事実を希望に転化させるためには何が必要かを考えなければならないだろう。

楢葉町の帰還開始しましたニュースを見つつ、つい考えてしまいたした。