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ばらいろの雲

 

ばらいろの雲 岩波少年文庫87

ばらいろの雲 岩波少年文庫87

 

 収録されているのは、教訓性があるが、幻想的な雰囲気が魅力。「ものをいうカシの木」は、孤児で酷使されているエンミが、逃げてカシの木のうろを住処にして幸せに暮らす。最終的には親切な人間のもとで、まじめに働いて成功する物語だが、このカシの木暮らしがよみどころ。「ばらいろの雲」は、少女カトリーヌが美しいばら色の雲をペットのようにかわいがりたい、と思う物語。雲を編む、といわれる編み物の名手の大叔母のもとで修行することで、立派な編み手になる。 「ビィトルデュの館」では、道中の廃墟で出会った顔のない女神像に、母の面影を求め、画家としての修練を積むディアーヌの物語。本当の芸術とは何か、と求める思いが、亡き母への思慕と重なる。子供向けだから、と無理して教訓臭くしたかも。もっと自由にかけばよりおもしろそう。