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14歳、ぼくらの疾走

 

14歳、ぼくらの疾走: マイクとチック (Y.A.Books)

14歳、ぼくらの疾走: マイクとチック (Y.A.Books)

 

 マイクは、クラスでは目立たない少年だ。父親は不動産で稼ぎ、豪邸に住んでいるが、最近は事業が不調で実は家も抵当に入っている。母親はアルコール中毒状態だ。クラスの中でもとりわけ魅力的なタチャーナに密かに恋しているが、クラスメートのほとんどが招待された誕生日に呼ばれずに、この世の終わりの気分になる。折からはじまった夏休みだが、母親はアル中治療の療養所に向かい、父親は、美人の秘書と2週間の“出張”にでかけ、独り家に取り残された。そんなマイクに、クラスの問題児チックが近づいてくる。4年前に、ロシアから来て特別支援学校に通い、普通の学校に移り、実業学校に移り、さらにギムナジウムに転校してきた東洋系の少年だ。だが、絶えずアルコールの臭いをさせる問題児でもある。やけっぱちの気分からチックを家にあげたマイクは、彼と波長が合うのに気づく。そして、盗んだ車を使って、二人だけの旅に出る。果てしない道路。子どもだけなのがバレないかとヒヤヒヤしながら、マイクも運転を習う。親切だが、不気味にストイックな一家や、鉄砲をぶっ放す独り暮らしの老人。ごみ捨て場で出会い、しばし同行する不思議な少女。さまざまな出会いがあるが、最後は警察に見つかり、事故を起こし、チックは施設へと送られる。まじめな男の子と頭は切れるが不良な男の子の出会い、というのは、ある意味定番の物語で、二人の関係ができていくのもトントン拍子すぎてやや不満。でも、こうしたロードムービー的な疾走感は、読んでいる人間を気持ちよくさせるところがあるのも事実。作者は早世したとのこと。ちょっと残念。