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ラミッツの旅 ロマの難民少年の物語

 

ラミッツの旅―ロマの難民少年のものがたり

ラミッツの旅―ロマの難民少年のものがたり

  • 作者: グニッラルンドグレーン,Gunilla Lundgren,Amanda Eriksson,きただいえりこ
  • 出版社/メーカー: さえら書房
  • 発売日: 2016/01
  • メディア: 単行本
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 実話をもとにした物語。コソボからドイツに移住してから生まれたラミッツ。両親はまじめで教育熱心だ。だが、教室でロマだというので差別的な扱いをされ、お金が無くなれば疑われるという中で、学校に行く意欲をなくしてしまう。おりしも、一家は難民申請を却下され、ラミッツの家族はコソボに送り返されてしまう。だが、内戦で荒れたコソボの状況は悪化し、ドイツ帰りなら金があるだろうとねらわれ、父さんは拉致されてしまう。祖父母の尽力と、持ち帰ったお金で、母さんとラミッツたちは、なんとか国外にのがれるが、スウェーデンにたどりついたものの、母さんはうつ状態になり、姉さんもベッドから起きられなくなる。偽難民の中傷を受け、当初頑張っていたラミッツもついに言葉を失う。だが、ついにあとからたどり着いた父さんと再会。一家は、新しい道に踏み出す希望がみえたところで終了し、思わずほっとする。ラミッツは、現在大人になり難民の支援員として働いているという。コソボアルバニア人とセルビア人に差別され、耐え切れなくなって出国した経緯をみると、「良い暮らしを求めて」程度で戦争でもないのに難民に紛れ込むなんて、と思っていたことが、安易であったとよくわかった。また、行った先で差別されることでやる気をなくしたり、同じ難民同士でもねたみあったりなどの問題が、具体的な形でわかった。