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勇者はなぜ、逃げ切れなかったのか 歴史から考えよう「災害を生き抜く未来」

 

 東日本大震災の復興の高台移転のため、調査を行っていると、予定候補地に昔の遺跡が発見された。調べてみると、貝塚は、いずれも今回津波が到達していないところに発見された。昔の人々は、津波の恐ろしさを知っていて、それをきちんと伝えていたのではないか、というテーマで書かれたノンフィクション。表題は、榛名山の噴火の後から、古代の勇者とでもいうべき鎧をつけた人間が発見されたことによる。興味をひこうとしてつけたタイトルであることはわかるが、大きな主題は危険の伝承であり、勇者が渡来人であるため危険を知らなかったという展開? という後に、勇者が子どもの時には祈りで噴火が収まったから、祈るためにもどったのでは、という結論は、納得できるがちょっと焦点がぼけている気もする。過去からの知恵の伝承と、その途絶えたプロセスを柱として、もうちょっと整理したら、より危機感をもてる内容になったのでは?