児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

少年キム上

 

少年キム(上) (岩波少年文庫)

少年キム(上) (岩波少年文庫)

 

キムは、インド駐留のイギリス兵の息子だが、幼いうちに両親を亡くし、ラホールの下町でたくましく育つ。この、頭の回転が良く、好奇心が強い男の子は、チベットから来た仏教の高僧ラマと偶然出会う。全ての罪を洗い流す「矢の川」を求めて旅する無邪気なラマの世話をやき、ラマからも弟子と呼ばれ、二人には不思議な絆が生まれる。だが、キムが持っていたお守りの中の洗礼証明書がきっかけで、イギリス部隊に発見され、キムは学校に行かされることになってしまった。ラマは、キムのために最高の学校に進学できるように資金を提供し、キムはいやいやながらも進学するが、インドのまちや自然の中に飛び出したいという衝動までは誰も止められまい。そして、そんなキムを〈大いなるゲーム(グランドゲーム)〉のプレイヤーとして育てようという力が動く。英国支配下のインド、そしてインドに手を伸ばそうとするロシアという歴史の流れを背景に、混沌としたインドのまちが、キムの楽園としてすばらしく魅力的に描かれ、ワクワクがとまりません。