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お父さんの手紙

 

お父さんの手紙 (つのぶえ文庫)

お父さんの手紙 (つのぶえ文庫)

 

 舞台は第二次世界大戦直前のハンガリー。ペーターのお父さんラズロは、いつでも楽しいことを見つける、ちょっと型破りなお父さんだ。お母さんは、ペーターがまだ小さいころ自動車事故で死んでしまったが、愉快なお父さんと一緒なら少しもさびしくない。だけど、外交官のお父さんと一緒にドイツで楽しく暮らしていたのもつかの間、一人でペーターはハンガリーに帰らなければならなくなった。ペーターのお母さんはユダヤ人だったのだ。ハンガリーで一緒に暮らすおじいさんは、立派なお医者さんだけど、ちょっと堅苦しい。楽しみは、お父さんが書いてくれる楽しい手紙だけ。でも、お父さんの字が汚すぎて、おじいさんによんでもらわなければいけない。ペーターもお返しに、思いつくまま楽しい日常の冒険を(本当は、毎日たいくつだけど)書いて送っていた。あるときから、お父さんは、タイプライターが手に入ったといってタイプの手紙に変わり、ペーターは、やっと一人で読めるようになった。ところがある日、決して入ったことのないおじいさんの部屋に、偶然入ったペーターは、自分が出したはずの手紙をそこで見つけ混乱する。そう、外交官の立場でユダヤ人を助けていたお父さんはナチに命を奪われ、おじいさんが、それを隠して代わりに陽気な手紙を書いてくれていたのだ。ドイツのハンガリー進行の直前におじいさんは亡くなる。書きかけの手紙を残して。ペーターは、大おばさんにひきとられ、その後、ドイツで彼の面倒をみていてくれ後にお父さんと結婚していたテアと再会。幸せな一生をおくる。向う見ずなお父さんと、謹厳実直なおじいさんの姿の対比がくっきり描かれているだけに、おじいさんの思いが胸を打つが、この意外な真相についての書き込みが、やや足りないので、読書力のない子は、やや混乱しそう。