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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

百年後、ぼくらはここにいないけど

 

百年後、ぼくらはここにいないけど

百年後、ぼくらはここにいないけど

 

 帰宅部なみに緩い部活を求めて入った地理歴史部。のんびり本を読んだりしながら3年生になった。だが、今回の顧問となった堀田先生は熱心で、このままでは廃部になるから立て直そうと発破をかける。太陽と共に入部した健吾は部長と副部長になったが、現在部員は5名。文化祭でインパクトを、というので堀田先生からジオラマ造りを提案されるが、なんと太陽が夏休みに外国へと転校。健吾はまさかの責任者となりあわてる。実は鉄道オタクの健吾は、鉄道模型のジオラマ造りの経験があるが、ある出来事からそこ過去を封印。地元100年前の渋谷を作ることになるが、地元で創業108年を誇るソバ屋の沙帆は、それをネタにまた家業がバカにされると不満気味。少しづつ進むジオラマ。鬱屈する健吾と、その健吾を受け止める堀田先生の交換日記。あっさり破れた健吾の塾での初恋ネタは、はっきりいってなくてもいい感じがした。だが、ジオラマの材料を安く上げるための工夫と、それを応援してくれたまもなく再開発に飲み込まれる地元商店街の思い。戦争で取り壊しを強制され移転したソバ屋の過去など、少しづつ過去の渋谷に気付いていくメンバーの姿が、意外といい。そして、生活感をだすために、あえてミニチュアに傷をつけるとかのデティールも楽しい。文化部の部活の魅力が伝わりそう。