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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

あんずの木の下で 体の不自由な子どもたちの太平洋戦争

 

 太平洋戦争下、通常でも差別の対象だった障がい児は、過酷な状況にあった。疎開先もみつからない、先生たちは、他校の先生たちより「こんな子どもの面倒をみるひまがあれば軍隊に行け」と言われる。そうした極限の中で、子どもたちを守り抜いた貴重な光明学園の記録。だが、残念ながらなんとも、書き方がお説教くさい。疎開先を確保したり、専用列車を手配した松本校長先生は、単なるやさいしい先生のはずがない。当時の子そもたちも怖かったとも証言している。怖さやしたたかさがなければ、切り抜けられたはずがないのに、その雰囲気がほとんど伝わってこない。また受け入れた上山田温泉も、当然差別的な意識があったはずなのに、どう受け入れていったかがよくわからない。年表を話し言葉風の文章にしているようだ。また、いじめはいけないと力説しているが、とても観念的。どうやって、自分の中のいじわるな気持ちを変えていくか、変えていけるかがみえてこないと、スローガンだけで実態が伴わないものになってしまいそう。ぜひ、もっとちゃんとした本になってほしい。