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おいぼれミック

 

おいぼれミック

おいぼれミック

 

 イギリスはレスター。ぼくたち一家はインドからの移民だ。そして、この街には移民が多い。だけどぼくたちが引っ越した隣の家は、いつも怒鳴り散らすイギリス人の老人、ミックが住んでいた。ミックはぼくら移民が大嫌いな差別主義者だった。大音響で音楽をかける(幸い僕の趣味とはバッチリあっていたけど!)。つねに怒鳴る。だけど、学校の不良連中がミックにからもうとしたとき、ぼくは放ってはおけなかった。助けてあげたのに、ありがとうもいわないミック。だけど母さんはいう。我が家はシク教だ。シク教とは、他人とどうかかわるかを大切にするのだと。でも、同族の中でも微妙な対立がある。だれにでもふるまうのがシク教だって父さんは信じているけど、おじさんは、ホームレスなんかおっぽり出せという。老人のミックは、今更考え方を変えられないんだと母は言う。だが、倒れたミックを病院に入れ、ごみ箱みたいだった家を掃除する中で、ハーヴェイはミックには娘がいたこと。そして娘が黒人と結婚したために、逆上したミックが娘を拒否したことを手紙から気が付く。原題は「老いぼれ犬に新しい技を教えてもむだだ」ということわざを縮めたものとのこと。娘と再会し、まさかの新しい技を覚えたミックとハーヴェイのハッピーエンドはうれしいけど、イギリスは移民問題が大変とは知っていたが、実際街のほとんどが移民で占められた時、元からの住民はどんな気持ちになるだろう? そんなに簡単じゃないことが良くわかった。