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ボノボとともに

 

ボノボとともに  密林の闇をこえて (単行本)

ボノボとともに 密林の闇をこえて (単行本)

 

14歳のソフィーは、アメリカ人の父とコンゴ人の母を持つ。母がボノボの保護活動に精力を傾けてコンゴ共和国に留まることを選んだため、二人は離婚。ソフィーは、休みの時だけ母の運営するボノボの保護施設に遊びに来ている。ある日、ボノボの子どもがひどい扱いを受けて売られているのを見て、禁止されているにもかかわらず、衝動的に買ってしまう。オットーと名付けたその子の世話を懸命にしているうちに、特別な絆を感じるようになる。だが、直後にオットーを売った男が、別のボノボの子2頭を持ち込んでくる。親は間違いなく殺されたはずだ。自分が一度買ったことの結果を目の当たりにしてショックを受けるソフィー。帰国直前、母はボノボを野生に返すため施設を離れるが、その直後革命が勃発。アメリカ大使館から迎えがくるが、取りすがるオットーを振り払えずに、車から飛び出し、ボノボの保護地に飛び込んだ。直後、手当たり次第破壊と略奪をする兵士が施設に乱入。職員は次々に殺され、施設は占領されてしまう。だが、ボノボも常に友好的とは限らない。攻撃されないような振る舞いを続けるうちに、オットーと共に群れに受け入れられるが、いつまでもここにはいられない。しかし、オットーと共に抜け出そうとすると、群れがついてきてしまった! 兵士にみつかればレイプされ殺されかねない中、ボノボたちと共に、どうやって生き延びるかというザバイバルが始まる。政府がまともに機能せず、利権を狙う外国も兵士たちが殺し合うままにさせる現実。鉱山への強制連行で無人となった村や虐殺の村、殺した人間の指を切り取ってネックレスにしている少年兵、混乱する内戦状態の中で、ギリギリのところで助かる主人公は、ちょっと都合よすぎともいえるが、やはりこうあって欲しい。人が次々と殺されていく中でもオットーを守らずにはいられないソフィーの想いには、強い説得力がある。主人公はどうなるのか、というドキドキハラハラで一気に読んでしまう。