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紅のトキの空

 

紅のトキの空 (児童図書館・文学の部屋)

紅のトキの空 (児童図書館・文学の部屋)

 

 スカーレットは12歳。母さんと弟レッドと3人で暮らしている。スカーレットとレッドは父さんが違うから肌の色が違う。そのせいで二人は兄弟にみてもらえないけど、スカーレットは弟が誰よりも大切だ。弟は、鳥のことならなんでも知っているが、こだわりが激しく、姉以外とは会話も成立しない。母も家事を放棄し、定期的にソーシャルワーカーの訪問を受けている。スカーレットが一番恐れているのは、家族が(特に弟と引き離されて)バラバラになること。必死に家事と弟の面倒をみているが、ある日、学校で楽しみにしていたワークショップがあり、つい風邪気味の弟を母さんと家に残して登校したところ、母さんの寝たばこで火事になってしまった。二人は助かるが、窓辺の鳩のヒナが心配で逃げようとしなかった弟は特殊教育の施設に、母さんは病院に、スカーレットは里親にあずけられる。レッドが心配でたまらないが、里親は思いがけずやさしく、その家の男の子ジェズもスカーレットをからかい、気楽に接して友だちにもいとこだと紹介してくれた。ふつうの家の子になって友だちといる幸せを初めて味わう。その学校のそばの怪しいおばあさん、ババ・ヤガーといわれる彼女の家に、肝試しで行かされたスカーレットは、故国を追われたけがをした鳥を保護している老女だと知る。そして、ついに弟の施設をつきとめ、弟を脱走させ彼女の家に逃げこんだ。最終的にソーシャルワーカーに連絡されるが、里親の努力で弟とともに暮らせるようになる。タイトルは、スカーレットの父の国でショウジョウトキが群れ飛ぶという話を母さんから聞いて、姉弟がいつも憧れているイメージ。重い現実の中で、スカーレットが弟が好きでたまらない思い。だが、ふつうの家族や友情にも憧れる思い、そして彼女を受け入れてくれた友だちや里親、鳥を保護する老女との出会いで救われていく過程にドキドキしながら一気に読んでしまう。