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コリアンダーと妖精の国

 

コリアンダーと妖精の国

コリアンダーと妖精の国

 

 クロムウェル清教徒革命時代のイギリスを舞台としたファンタジー。土台になっているのは明らかにシンデレラだが、この世と妖精の国の世界で、いわば親子二代ダブルのシンデレラ物語が語られるような構成がユニーク。主人公はコリアンダー。美しくやさしい母親と、その母を心から愛している裕福な父のもとで幸せに成長する。だが、ある日コリアンダーのもとに、銀色の靴が届いてから異変がはじまる。コリアンダーは靴に強く惹きつけられるが、母は何かを恐れ始める。そして母は急な病で死に、悲嘆にくれた父にはクロムウエル派から王党派の嫌疑がかけられ、その嫌疑を逃れるためと無理に清教徒の女と結婚を勧められる。それはとんでもない女だったが、唯一の救いは義理の姉ヘスターが気が弱く臆病だが、やさしい娘だったことだった。だが、処刑の危険を逃れるため父が外国に逃れると、継母は牧師と称する男を引き込み、財産を二人で食いつぶし、コリアンダーはアンと呼ばれるようになり、ヘスターが助けてくれるもののついに箱に閉じ込められてしまった。閉じ込められたコリアンダーは、妖精の国についていた。そこの王は王妃と娘を失って気力をなくし、2度目の王妃とその娘が権力をふるっていた。王妃は自分の娘を王子と結婚させようとしているが、コリアンダーは王子と恋におちる。そして失われた王の娘こそ、母であることをコリアンダーは知る。妖精の国と現実のイギリスが交錯し、清教徒革命の嵐を背景にコリアンダーの物語は進む。ラストは、その二つの世界が統合したといっているが、ややわかりにくい感じもした。でも歴史的な背景が物語にうまく取り込まれている。