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語りべのドイツ児童文学 O・プロイスラーを読む

 

ドイツ語とドイツ文化史を踏まえたプロイスラーの研究書。とりわけ、プロイスラーの故郷がチェコの飛び地にあるドイツ領で、ソルブ人という少数カトリックの独自のアイデンティティを持っていた、という解説は、日本ではわからないニュアンスの知見でおもしろかった。プロイスラーがパウゼヴァングとの比較で社会性がないことを批判されたことについて触れた章もあるが、こうした一時的な批評は、どちらにしろ時の流れの中で淘汰されると感じた。パウゼヴァングは確かに社会派の作家だが、観念的な作家ではなく、自分の幼児期のナチスを目の当たりにした原体験に基づく作品の迫力はすさまじい。プロイスラーの評価によって、あえて低くする必要もないかも。『クラバート』は、主人公の成長の軌跡を大きなテーマとしているが、今でも変わらない魅力をはなっている。