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兵士になったクマ ヴォイテク

 

兵士になったクマ ヴォイテク

兵士になったクマ ヴォイテク

 

 兵士として登録されたクマの実話をもとにした物語。ポーランド出身のピョートルやスタニスワフは、祖国をドイツとソ連に引き裂かれる。自国を取り戻す戦いとして連合軍に加わった彼らは、シリアからイタリアに侵攻する途中で、一等のこぐまを買うことになる。ヴォイテクと呼ばれたこぐまは、食いしん坊だが愛嬌があり、いつしか隊のマスコットとなる。人間のまねをするのも大好きで、兵士とともに砲弾を運んだことが認められ、正式に兵士として登録され、ずっとともに行くことが認められる。ヴォイテクの天敵ともいうべきサルのカシカにさんざんな目にあわされながらも、カシカが赤ちゃんを産んだ時に、赤ちゃんに夢中になる。気がやさしくて、好奇心いっぱいのヴォイテクの存在は、戦場で殺伐とした兵士たちの心のよりどころになっていく。ついに勝利の日はくるが、それはボイテクとスタニスワフたちとの別れとなった。スコットランドの動物園で、その後も幸せに過ごしたとのことはなにより。原語はオランダ語だが、英語版からの訳だというのがきになるが、魅力的な作品だ。