児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ナビラとマララ 「対テロ戦争」に巻き込まれた二人の少女

 

ナビラとマララ 「対テロ戦争」に巻き込まれた二人の少女

ナビラとマララ 「対テロ戦争」に巻き込まれた二人の少女

 

 爆撃によって目の前で祖母を殺され、自分も大けがを負ったアフガニスタンの少女ナビラさん。運命に負けず、教育、特に女子教育の重要性を訴えているのは、ノーベル平和賞をとったマララさんと同じ。だが、彼女を爆撃したのはアメリカのドローン。加害者が違うだけで、アメリカ議会に訴えに行ってもわずか5人しか耳を貸してくれなかった! ドローン1機で学校が10校作れる。戦争よりも、教育をという訴えに耳を貸してくれる人は少ない。「テロ」の背景にある、冷戦の歴史や植民地独立の時の大国の思惑などの事情を、きちんと子ども向けに解説した本は少ないので貴重。イスラムのテロを非難しながら、無人機で市民も多数死んでいる攻撃を続けているのでは説得力がないですよね。ちなみに、訪日したナビラさんが感銘を受けたのが広島。原爆で壊滅したのにみごとに復興を遂げた広島は、戦火に荒らされた国の未来のヴィジョンとして、とても希望を与えられるものだという。そうした目で広島をとらえたことがなかったので考えさせられた。また、広島では被害者だが、日本もアジアの国への加害者としての面を忘れてはいけないとの指摘も重要だと思った。