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アヴェ・マリアのヴァイオリン

 

アヴェ・マリアのヴァイオリン (単行本)

アヴェ・マリアのヴァイオリン (単行本)

 

あすかは、四国の徳島に住んでいる中学2年生。ヴァイオリンを習いたかった母の勧めで小さい時からヴァイオリンを習っている。そこそこには弾けるがプロになれるレベルとは思えない。父親は医者で、医者になることも期待されている。ある日あすかは1台のヴァイオリンを手に入れる。それは、かつて強制収容所で、ユダヤ人を落ち着かせてガス室に誘導させるための楽団でユダヤ人の少女ハンナが弾いていたものだった。徳島では、第1次世界大戦のときに、ドイツ捕虜を人道的に扱った歴史がある。その美しい史実と、ハンナの過酷な体験を対比させるようにえがあいているのだが・・・・正直、レポートのまとめをよんでいるよう。こういうことがあった、こういうことがあった、という記録を引き写して、物語としてこなしていない。そもそも1200万円のヴァイオリンをポンとかうのかよ~、とかあすかの暮らしにもちょっとびっくり。アウシュビッツと対比させるなら、日本も第2次世界大戦の強制連行や、そうでなくても「戦場にかける橋」など多数の死者を出した捕虜収容所じゃないとフェアじゃないと思う。ハンナは、結局、生き延びたものの心に傷を負って、突然死で亡くなったとのこと。「モーツァルトはおことわり」

 

モーツァルトはおことわり

モーツァルトはおことわり

 

 

と同じテーマだが、焦点を絞った描くか、変に物語仕立てにせずにまとめるべきだったのでは?